まさか七瀬ちゃんが家まで来るとはね。
誰が教えたんだ?……なんて聞くまでもないわな。間違えなく和美さんだろ。
「普通教えるかね?あんなヤる為だけに借りてるようなアパートを」
マジで焦ったわ。
・・・・にしても、気が重い。
柊弥に“要らない”と面と向かって言われたのが初めてで、自分の想像以上に気が滅入った。
あんな生意気なクソガキの何が良いか……そんなこと聞かれても俺はきっと答えられない。
でも俺は、柊弥以外に従うつもりは毛頭ない。俺が従うのはあくまで九条 柊弥だけだ。
別に血の繋がりがあるわけでも、特別な関係ってわけでもないだろう。
ただの主人、ただのお付き……そう言われれば、それまでな関係ではある。
それでも柊弥と共に過ごしたこの10年が、俺にとってはとても幸せだった。
柊弥は俺に生きる意味を与えてくれて、居場所を作ってくれた。
柊弥がいない世界を生きていた15年は、死ぬほど退屈で、どうでも良くて、なんで生きてるかも、何をしているかも、この世に生まれた意味も、自分が何者なのかも、何も見つけられずに、ただ喧嘩に明け暮れる日々。
大切な人も、大切なものも、何一つない。
何者でもない、何者にも成れない。
────── 俺は一体なんなんだ?



