俺様御曹司は逃がさない

「ああ、佐伯君……ね。どうも初めまして。私は霧島と申します。柊弥様のお付き……と言えばご理解いただけますかね。決して怪しい者ではございません。ね?七瀬様」

「あ、はい」

「そうっすか。俺、今から舞んち行くんで霧島さん……でしたっけ。こいつを送っていく必要ないっすよ」

「そうなのですか?七瀬様」

「あ、はい」

「行こ、舞」

「え、あ、う、うん。すみません、霧島さん」

「いえ。七瀬様の"ご友人"なら安心してお任せできます。七瀬様のこと、よろしくお願いいたします。"ご友人"の佐伯君」


何故か“ご友人”を強調しながら言う霧島さん。

なんとなく……この2人がバチバチしている気がしてならない。


「さっさと戻った方がいいんじゃないですか?お坊っちゃまがお待ちかと。えっと、九条君……でしたっけ。怒られますよ?彼、短気そうですし」

「ハハッ。それはそれはお心遣いどうも」


なんとなく……ではない。確実にバチってるわ。


「拓人行こ?霧島さん、ありがとうございました」

「いえ。では、失礼致します」


霧島さんの車が去っていくのを見て、あたしはチラッと拓人を見上げてみた。

すると、目を細めてあたしを見ている拓人と目が合う。


「おかえり、拓人。もう部活終わったの?早くない?」

「ただいま……じゃない!!」

「いてっ」


軽くチョップを食らった。


「はぁぁ。マジで焦ったわ」

「誘拐とでも思ったの?」

「思うでしょ」

「自ら乗ろうとしてたのに?」

「自ら乗ろうとしてても誘拐とかあんでしょ」

「ま、まぁ……確かにある……か」


拓人のガミガミ説教を食らったのは言うまでもない。