俺様御曹司は逃がさない

「私だからいいものの……これは少し考えものですね。柊弥様が振り回されるのも頷けます」

「え、なんの話ですか?」

「いえ、こちらの話です。で、なんのご用でしょうか」

「あの、霧島さん。戻って来てくれませんか?九条には霧島さんが必要なんです。口では強がってるけど、でもっ……」

「申し訳ありません。それにはお応えしかねます」

「何でですか」

「私は柊弥様の命令にしか従う気はありません」


あいつが素直に“戻ってきて欲しい”なんて言うわけがないじゃん。霧島さんだってそんなこと、分かりきってることでしょ?

なのに、どうして……?

霧島さんにとっても、あいつは“特別”な存在なんじゃないの?


──── そんな2人を引き離してしまったのは、紛れもなくこの“あたし”だ。

九条はあんなんだから素直に言わない。

でも、毎日あいつの傍にいるあたしには分かるし、伝わってくるの。

九条はいつだって霧島さんを求めている。

きっと九条の中で霧島さんという存在は、ただのお付きではない。

友達?……いや、もう“家族”そのものなんだと思う。

逆もまた然りでしょ。

霧島さんにとって九条は、ただの主ってだけじゃないはず。

そんなの見ていれば一目瞭然。