何故かブチギレ状態の凛様に、ただ苦笑することしかできないあたし。


「な、何を……と言われましても。別に何も……なんですけどっ……」

「こんの……泥棒猫がぁーー!!」


あたしの胸ぐらに掴みかかろうとした凛様を、取っ捕まえたのは九条だった。


「凛。お前は何でもかんでもギャーギャー騒ぎすぎ~。こいつが体調悪そうだったから連れ込んだだけだっつーの」

「フフ。柊弥があんな顔して舞ちゃん連れ込むから凛ちゃん勘違いしちゃったんじゃない?あ、おはよう。舞ちゃん」


ニコッと微笑んであたしを見ている咲良ちゃん。

そういう関係じゃない……とは言ってるのの、咲良ちゃんは一応九条の“許嫁”なわけだし、なんか申し訳ないな。


「おはよう……ございます。あの、別にあたしと九条様はなんっにも無いですし、ただのマスターとサーバントという関係でしかありません。あ、時々“おともだち”という設定で。ははは」


一瞬、ほんの一瞬だけ咲良ちゃんの顔から笑顔が消えた。でも、すぐにいつも通りに戻ってニコニコしている。

この時あたしは、咲良ちゃんの笑顔が消えたことを気にも止めてなかったし、理由も何も知らなかった。