俺様御曹司は逃がさない

そして、目が合うあたし達。

九条はばつが悪そうな表情を浮かべて、何だか落ち着きがない。

あたしの呼吸はいつの間にやら正常に戻っていた。


「いや、なんつーか……やりすぎた」


後頭部をかきながら顔を逸らして、恐らく本当に悪いことをしたって反省しているっぽい九条に、少しだけ笑いそうになってしまったのは言うまでもない。


「本っ当にありえない。あんな所であんなことするなんて、どんな神経してんのよ。あんた」

「だ、誰にも見えねーし?ちょっとからかうつもりだったっつーか……」


こいつ、からかう為だったらあんなこと誰にでもするわけ?


──── あんな優しい手つきで、誰にでも触れるわけ?


・・・・はは。

そりゃ勘違いする女が出てくるのも不思議じゃないわ。


「あんた、誰にでもあんなことしてるわけ?」

「あ?するわけねぇだろ」


逸らしていた顔をこっちに向けて、何故か逆ギレ気味の九条が意味不明すぎる。


──── ん?『するわけねぇだろ』?


え、どういうこと?

ならなんで……どうしてあたしにはあんな触れ方をしてきたわけ……?

いや、深く考えるのはやめよう。だって、こいつの行動や言動に深い意味があるとは到底思えないから。