俺様御曹司は逃がさない

「あらそー。ま、どーでもいいけど」


どうでもいいなら聞いてこないでくれる?……と言いたいけど、無駄に話を広げるのも面倒くさいからヤメた。


「九条様は何をしているんですかー」


別に興味も無いけど、何となく九条が不機嫌になりそうな予感がするから、“適当に九条の話でも聞こう”作戦を決行することにした。


「あ~?俺?」

「はい」

「気分次第で適当に女抱いてる」

「そうですか」


・・・・・・は?

いや、今なんて言った?

流れで普通に返事しちゃったけど今こいつ、とんでもない爆弾発言しちゃってない?

あたしはススッと九条から離れた。


「なんだよ」

「とりあえず物理的に距離を取ろうかと」

「はあ?」


信じらんない。

マジでクズじゃん。

この敷地内の何処かで……ってことでしょ?ありえなくない?


・・・・そして、ふと思った。

あたしは男嫌いになりかけている……というわけではないのかもしれない。

あたしは“九条 柊弥というクズ”が嫌いなだけで、“クズ男”が嫌いなだけなんだと。

お父さんのちゃらんぽらん具合が、まだ可愛い方だと思えちゃうほど、九条のクズっぷりが大いに上回っている。

お父さんは無職でフラフラしてるけど、ああ見えてお母さん一筋だし、お母さんのことが好きすぎるのが伝わってきて気持ち悪いくらいだもん。