俺様御曹司は逃がさない

────── あの、一言言ってもいいですか?


・・・・近いっ!!!!

この人、なんでこうも距離感が掴めないのかな?おかしくない?

お金持ちって漏れ無く距離感バグ人間しか居ないわけ?お金持ちって距離感が狂っちゃうのかな?そうなのかな!?


カチャッ。


「シートベルトくらい自分で付けろっての~」


何事も無かったかのように、また少年誌を読み始めた九条。


「……あ、ありがとう……ございます……」

「ん」


・・・・こいつと一緒に居ると心臓が持たない。

無駄にイライラさせられたと思いきや、無駄にドキドキさせられるし……本当に厄介すぎる。


「それ読んで車酔いにでもなればいいのに。んで、くたばればいいのに」


窓の外を眺めながらボソボソッと呟いた。


「あ?何か言ったー?」

「いえ、何も」


すると、再び頭頂部にゴンッと衝撃が走った。


「いっったぁぁ!!」

「マスターに向かって『くたばればいいのに』はないでしょ~」


聞こえてんじゃんっ!!

ていうか、マジで痛いんですけど!!涙チョチョぎれそうなんですけど!!

あたしは涙を浮かべながら九条を睨み付けた。