俺様御曹司は逃がさない

「てかさ、意外だね」

「んあ?何が~?」

「毎週コンビニで買ってるの?それ」

「んなわけ。霧島が……」


『霧島が……』そう言って言葉が止まった九条。チラッと見上げてると、“しまったぁ”的な表情をしている。

まぁ、だいたい察しはつくけど。

何も言わなくても、毎週ちゃんと霧島さんが買ってきてくれてたんでしょ?


「霧島さんのこと、“名前を呼んではいけないあの人”……みたいな扱いをするのはやめたら?」

「いや、似ても似つかねぇだろ。つーか、別にそんなんじゃねーし。お前はいちいち首突っ込んでくんな」

「だって、あたしのせいっ……」

「さっさと乗れ」

「ちょっ……!?」


適当に背中を押されて、車内に押し込まれるあたし。


「あんたねぇ……」

「ん?何~?」


あたしの隣で、何食わぬ顔をしながら少年誌を読み始めた九条。

・・・・はぁぁ……と大きなため息をつきながら、シートベルトに手を掛けて引き伸ばす……あれ?シートベルトが伸びない。

ガンッ、ガンッと引っ掛かって動かないんだけど。


「あの、榎本さっ……」


爽やかで上品な香水がフワッと香ると共に、距離感バグ男の九条があたしに覆い被さるようにシートベルトを確認している。