俺様御曹司は逃がさない

────── なんか、これはこれで……恋人がやることみたいな感じがして、妙に恥ずかしくなってきたんですけど。


チラッと正面の鏡を見ると、九条と鏡越しに目が合って、ドキッと胸が弾んだ。

何故か目を逸らせなくて、九条も何故か目を逸らさずあたしを見つめ続けてくるし、どうしたらいいの?これ。

・・・・ていうか、いつからあたしのこと見てたんだろう。

すると、九条の口が動いて何かを言っている気がする。

あたしはドライヤーを止めた。


「な、何?」

「あ?べっつに~。何でもなぁい」


そう言いながらおもむろに立ち上がって、あたしをジーーッと見つめてくる九条。

しばらく見つめ合って沈黙がつづく。


「で、お前はいつまで居んの?」

「へ?」

「俺、着替えたいんだけどー。そんなに俺の着替えが見たいわけ~?エッチだねえ、七瀬ちゃん」


ニヤニヤしながらあたしを煽るように見下ろしている九条に対して、殺意が湧かない方が絶対におかしいよね。


「はは。何を仰いますかー。九条様の生着替えほど目に毒なものはありませんよ?では、失礼致しますねー」

「おまっ……」


九条がガミガミ言い始める前に、そそくさ退散したのは言うまでもない。