俺様御曹司は逃がさない

「『上杉弟』って言うのはちょっと気になるっていうか、やめてあげてほしいなって」


ま、あたしもさっきまで心の中ではそう呼んでたけど……。


「は?なんで~?」

「いい気しなくない?」

「んなもん知らね~」


どうでもよさそうに……というか、ムスッとしている九条。大人っぽいのか子供っぽいのかよくわかんない男だな。


「“九条の息子”、“九条の孫”って言われたら、どう思う?あんた」

「うぜぇな」


真顔で即答すな。


「だろうね。それと一緒だよ」

「あ?」

「あたしが“七瀬の娘”、“七瀬の姉”って言われるのと、あんた達がそう言われるのとでは訳が違うっていうか、かなり意味合いが変わってくるもんなんじゃないの?って話。だから、名前で呼んであげてほしいってだけ」


あたしとは無縁の世界でこの人達は生きてるから、こんなド庶民のあたしが到底理解できるわけもないけど、それでも『上杉弟』というレッテルは気に入らないと思う。そもそも、仲が悪いなら尚更嫌なんじゃないかな。


「はあ?んなこと知ったこっちゃないっつーの」


舌をベーーッと出してふざけた顔をしながら、九条が教室のドアノブに手をかけた。