俺様御曹司は逃がさない

まあ、悪く言えば九条のことをナメている……そんな感じ。

──── それから九条が不機嫌だろうがなんだろうが、お構いなしにあたしに絡んできた榎本さん。

天馬に着くまでが本当にヒヤヒヤもんだったよ。隣の暴君がいつブチギレるか、分かったもんじゃないからね。


「どうぞ、七瀬様」

「……あ、はい。ありがとうございます」


本来、九条側のドアを開けるのが鉄則。なのに、榎本さんはあたし側のドアを開けた。九条は自らドアを開けて無言で車から降りると、先にスタスタ歩いて行ってしまった──。


「あの、榎本さん」

「何でしょう」

「こういうのは……困ります」

「と、言いますと?」

「あたしはサーバント云々の前に、ただの一般人にすぎません。だいたい、車から降りる時にドアを開けてもらうって行為自体、あたしには意味が分かりません。だから、あの人にしないようなことをあたしにはしないでください」

「……なるほど。“特別扱い”はお嫌いですか?」

「“特別扱い”される義理はありませんので」


あたしがそう言うと榎本さんは目を見開いて、クスクス笑っている。


「柊弥様は良いお嬢さんを見つけたようですね。いや、邦一様が……ですかね」


邦一様……?誰だろう。