俺様御曹司は逃がさない

「貧乏人の戯れ言なんざ耳に入らん」


そう言った瞬間、何かに躓いて転けそうになった。


「足元にはお気をつけてくださいませ、マスター」


フッと鼻で笑って、スタスタ前を歩く七瀬。

・・・・お前、今俺に足引っ掛けただろ。


「おい、七瀬」

「はい、なんでしょう。マスター」


勝ち誇ったような顔をして、俺の方へ振り向く七瀬が絶妙にうざい。


「随分と躾がなってねえな。ま、いいけど?二度とそんなことができないように、俺が調教してやるよ」


すると、ゴミを見るような目で俺を睨んでいる七瀬。こんな目をする奴もこいつくらいしかいないんだよな~。

俺が『調教してやるよ』なぁんて言ったら、大概の女は大喜びなんだけど。


「ハッ。あんたにそんなこと出来るのかしら?」


・・・・まあ、ほぼ確実に思い通りにはいかねえし、言うことも聞かねぇだろうな。



「ていうか、病人は大人しく寝てなさいよ」

「あ?天馬行くに決まってんだろ」

「はあ?馬鹿なの?」

「もう治った」

「んなわけないでしょ」


──── ピピッ、ピピッ……36.6℃。


「言ったろ?」

「いや、でもっ……」

「俺シャワーしてくるから適当に座ってろ」

「は、はあ……」