あたしは着替えと歯磨きセットを持って部屋を出た。


「あ、七瀬様……って、お顔が真っ赤ですよ?もしかして七瀬様も熱が」


そう言いながら、あたしに手を伸ばしてきた霧島さん。あたしは物凄い勢いでその手を避けた。


・・・・イケメン警報発令中。


イケメンというイケメンを拒絶するようになっている。もはや、男という生き物がNGなのかもしれない。


「……あの、どうかなされましたか?そこまで露骨に拒絶されると、少々傷つきます」

「コレハ、ベツニ、ナンデモ、ナイデス、スミマセン」

「ロボットごっこ……ですか?」


・・・・いや、何を言ってるんだ霧島さん。この歳にもなってロボットごっことか、キツすぎて目も当てられんでしょ。

そんな引いた目であたしを見ないでください。


「……シャワーお借りしてもいいでしょうか」

「ああ、はい。どうぞ?ご案内しますね」

「ありがとうございます」


シャワーのお湯を頭から浴びながら、必死に唇を擦った。

お願いだから消えて、消えてよ……。

全然消えてくれない九条の感触。そして、甘くて蕩けそうな感覚。


「……っ。最っ悪……」


こんなの、忘れたくても忘れられないじゃん。


────── あたしのファーストキスは、アツくて甘くて……蕩けそうだった。


そしてもう二度と、九条家には来ない……そう心に誓った。