俺様御曹司は逃がさない

どうか中身だけはお父さんに似ないでくれ……と願うばかり。


「あれ、慶は?」

「友達と先に行ったよ」

「そっか。……あ、ちなみに今日ロウソクパーティーが開催されるから」

「おお、マジですかぁ。それは大変ですな」


拍子抜けするほど無関心というか、他人事というか……。


「なら俺、学校終わりにロウソク買って行こうか?」


・・・・どうやら全くの無関心・他人事ってわけではなかったらしい。ちょっと安心したわ。泣こうが喚こうが、あんただって七瀬家の一員なんだから。


「いや、あたしが買いに行くからいいよ」

「お若いというのに精が出ますな」


──── 誰だよ、お前は。どんな立ち位置にいるんだよ。


たまに律が何者なのかが分からなくなる時がある。


「じゃ、学校頑張ってね」

「舞もね」


あたし達は背を向けて、反対方向へ足を進めた。

しばらく歩いていると、ゆっくりとあたしを追い抜いてった1台の車。パッと見でも分かるほどの高級車が少し先で止まった。

あんな高級車、あたしとは無縁だなぁ……そんなことを思いながら、その高級車を通り過ぎようとした時──。


「おい」


突然声をかけられて、少しビクッとしながらも声がした方へ顔を向けた。顔を向けた先には窓を開けて、あたしに話しかけてきたであろう男が車内から、ジーーッとあたしの顔を観察するように見ていた。


・・・・え、ちょ……なっ、なに?


「ふーーん。お前がジジイの言ってた女?」

「……へ?」