「別にそんなんじゃねーし。反射的なもんだっつったじゃん?」

「……そうか」

 
ピーーーーッ!!

終了のホイッスルが鳴った。


「……ねえ、あの女……本当にゴールしちゃったんですけど?……いや、化物でしょ。ありえない……」


凛は唖然としている。俺も蓮も『マジか……』としか出てこない。フラフラしながら紐をほどいて、背負っていた女を降ろそうとしている。“あいつ、絶対に倒れる”……そう思った俺は、観戦室から飛び出していた。

たかがサーバントの為に、たかが女の為に、なんでこの俺がバカみたいに走ってんだよ。マジで意味分かんねえーー!!


──── 会場内へ入る前に上がって息を整えて、何事も無かったかのように会場へ入った。


ザワザワしていた会場が、一気に甲高い声で溢れる。人がひとりブッ倒れてるっつーのに、キャーキャー喚く女共に虫酸が走るわ。

で、俺の視線の先にいたのは……上杉に抱えられているあいつだった。女共の甲高い声なんて書き消すほど、俺はあいつのぐったりしている姿に目を奪われていた。

そして、上杉に抱えられているあいつを見て、無性に腹が立ってモヤモヤする。

俺の存在に気づいた上杉がこっちへ向かってきた。いつもの俺だったら“あ、悪いね~”的な軽いノリでヘラヘラすんだろうけど、今は全くそんな気分じゃねえわ。