誰かが居ればいいな、本郷先輩じゃなければ…って思いながら生徒会室のドアを開けたら、唯一居たのは本郷先輩だった。

「なんでですかー………」

「なんなんだよいきなり」

「お一人ですか?」

「どう見たってそうだろ」

「ですよね」

「なんだよ。生徒会は休みだぞ」

「先輩こそどうしたんですか?」

「終業式の挨拶の編集」

「へー、大変ですね」

中間試験が終わったら七月の下旬から夏休みに入る。
本郷先輩は生徒代表の挨拶をする。

生徒達が先輩の話を静かに聞いてくれるのか謎だった。

「で?何しに来たんだよ」

「あー…ちょっと試験範囲で分かんないとこあって、もしどなたか居たら教えてもらえないかなって」

「なに?」

「え?」

「教科!」

「あ、数学です」

「ふーん。お前、数学得意なんじゃないの?」

「なんでですか?」

「入試、満点だったろ」

「そうなんですか?」

「お前は自分のことにも興味ないのかよ」

「逆になんで先輩が知ってるんですか?」

「俺だから」

「あっそ」

「いいから見せろよ。どこが分かんないの」

「え!見てくれるんですか!」

「その為に来たんだろ」

「挨拶は?」

「挨拶より試験のほうが先だろ。早く」

本郷先輩が勉強を見てくれるなんて意外だった。
先輩が居たらヤダなって思っていたけれど、考えてみれば成績トップの先輩に見てもらえるのはラッキーかもしれない。