愛を語るより…

社内ではけして見れられない、彼の顔。
それを見られる私は、世界一幸せ者なのかもしれない。

暴いてしまいたい欲求は、彼への漣のような愛へと変わり、これからお互いのペースで育て理解し合えばいいんじゃないか、という考えに落ち着いた。


大人だからこそ、その時々の時間をじっくりと堪能して。
けして性急にはならずに、ただただお互いの存在をより濃く胸に刻んで。


そこから、愛を深めていけばいいのだと…、彼は私に教えてくれた。


「キスだけで蕩ける香帆ちゃんが好きだよ」

「揶揄ってます?」

「そんなことないよ?愛っていう言葉を語る前に、香帆ちゃんの気持ちがひしひしと伝わるから。だから、キスしたい」

「…私も、…蒼さんからのキス…大切にしたい…」

「ん。ありがと。香帆ちゃん、好きだよ。こんな場所で言うのもなんだけど……愛してる」


そして、二人。
顔を見合わせて、笑い合って車から降りると、そのままホテルの中のレストランへと向かった。


夜は始まったばかり。
体を繋げたいなんていう熱は、多分想いのグラビティへと変化して、二人を包んでいくんだろう。


優しく握られた手は、擽ったい程愛しくて…。
私は彼の肩辺りに頭を寄せて甘えてみせることで、彼への愛を伝えることにした。


ドキドキする度に、それを察したかのようにキスをくれる彼。


本当に愛なんて言葉より…貴方からのキスを感じたい。

欲しい、欲しいと願う思いは、彼が全て叶えてくれるから…。


Fin.