愛を語るより…

「今日は、食事するだけ。勿論、部屋は取ってあるけど…俺は香帆ちゃんのことを大切をしたいから、ただの勢い任せでこの夜を台無しにはしないつもりだよ」

高級感溢れるホテルの駐車場に車を停めると、彼はゆっくりとそう話してくれた。

彼は本当に紳士だ。
私に常に安心感を与えてくれるし、逃げ道を作ってくれる。

だから、色々と身構えていた自分を恥じる。
期待してなかったと言ったら嘘になるけれど、でもそれは沢山の緊張の中に埋もれたモノだったから…。


「あの、蒼さん…」

「んー?どうしたの?香帆ちゃん」

「本当に、私なんかで良いんですか?」

「こーら。例え香帆ちゃん自身でも、俺の好きになった人を"なんか"だなんて括らないでよ」

「でも…っ」

「でも、も何もないよ。俺は自分の意思で香帆ちゃんを欲してるし、香帆ちゃんだから好きなんだから」


彼の視線は何時もよりも真っ直ぐだ。
それを直視出来ずに、彼方此方視線を泳がせていると、くいっと顎を捉えられる。


「俺を、信じて…?」

「私…蒼さんの思ってる以上に…愛、深いですよ?蒼さんが退いちゃうかも…」

「ふは、それは上等だね。思い切り期待してるよ」

「でも、それって重いかも…」

「本気で好きな子からの想いを、重いって感じる奴なんて、いないから。まぁ、俺の場合は重けりゃ重いくらい、愛されてるなって、嬉しくなるよ?」

「あの…っ」

「しー…もう黙って、俺のことただ好きになってくれるだけでいいから」


そして、私の言葉を掬い取るように触れ合う口唇。
蒼さんて、キス魔なのかな?って思う程、数え切れないくらいキスを受けてる私は、こくりと頷いて彼の手を握り返した。