はやる心臓の音と抱えつづける背徳感を隠しながらそっと背中に腕をまわして、抱きしめ返した。
親友として、今日も抱きしめ返した。
「うぎゃっ!くるしっ」
「…つぶれちまえ」
「それはひどいっ!きゃーったすけて~!」
いつ触ったってふわふわが保たれるボブ、マシュマロみたいで柔らかい華奢な身体、ピーピーさわぐ小鳥みたいな声。
できることならつぶして閉じ込めて、ぜんぶぜんぶを独り占めしてしまいたい。
─────コンコン。
「っ…!!」
「わっ!」
響いたノック音にハッ!と、全身から湧き立つほどの後ろめたさを感じたのはきっと、私だけ。
勢いよく離れると、真琴は不思議そうに首を傾ける。
「いらっしゃーい、律(りつ)ちゃん」
「…あ、ども。お邪魔してます」
「おにーちゃんっ!」
ガチャリとひねられたドアハンドル。
そこから顔を覗かせたのは、彼女によく似たお兄さんだ。
私が家に来ることなんか慣れたもののはずだというのに、いつもいつも必ず声かけてくるんだよなあ……このひと。



