「え…、だ、ダメすか…?」
ダメって言ったらどうする?
嫌だって言ったら、どうすんの?
そしたら真琴は私から離れてしまうだろうね。
知ってるよ。
知ってるからずっと閉じ込めたままだ。
いつか自然に消えていくものだと願いながら、考えれば考えるほど大きくなってゆく悪魔が私の心には住み着いている。
「…当たり前じゃん。今さらすぎてびっくり」
「やったあ!!りっちゃん大好きっ!!」
ぴょんぴょん飛び跳ねるように私に抱きついてくる真琴。
ふわりとかすめる、石鹸と花が混ざった彼女にしかない香り。
そんなものを嗅ぐと、いつも切なくなる。
「……おれも、大好きだよ」
「んっ?おれ?りっちゃん俺って言った!?」
「…もっとドキッとしてくれるかなって、あそんだ」
「あはっ。確かにちょっとドキッとした~!りっちゃんイケボだもんね!」
べつに男になりたいわけじゃない。
私は私─女─として、きみを見ている。



