「りっちゃ~ん、どれにする~?」
「んー。あんま甘すぎないの。真琴は?」
「わたし腹ペコ!ここからここまでぜんぶ食べれちゃいそうっ」
並んでショーケースを覗く、放課後16時40分。
真琴には内緒だけど、じつはこのドーナツ屋さんには1回だけ来たことがある。
これ言うとやんややんや騒ぎ出すだろうから秘密だ。
「じゃあ律はベーコンパイとかいいんじゃない?」
背後からそっと、顔が密着。
ドーナツ屋さんに来てドーナツ以外のものを頼んでいいのか、正直悩んでいたけど。
さすがだ。
私がずっと気になってたパイを当ててくるとは。
「…おいしそ」
「俺ドーナツにするから、すこし分けてあげる。行こ」
「俺たち先に注文して席取っとくよ」と言いながら、自然に繋がれた手。
超絶カワイイ女子生徒となんともガタイの良い強そうな男子生徒を残して、私たちはレジに向かった。