『真琴が帰ってこない。連絡も繋がらない』
朝は雲っていた。
雨が降りそうで降らない曖昧な天気は、夜には降るだろうと天気予報は言っていた。
───が、ハズレもいいところだと思うほど午後から晴れ空が続いていた日。
19時40分。
藍先輩からひとつの電話がきて、私は思わず勉強机から立ち上がる。
『上鷹くんもとっくに探しに向かってくれてる。こんなことぜったい律にだけは言いたくなかったけど…』
「なんでもっと早く言ってくれなかったんですか…!!」
『だってそしたらっ!!』
「っ、」
『そしたら……真琴のほうに飛んで行っちゃうでしょ』
天気予報が外れたように、変わったことは連続として起こるもの。
電話しながらも探し回っているのだろう息切れとか、珍しく感情的な声とか。
ここまでならないと本心を見せてくれない藍先輩も最悪だ。