天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

 昨日とは違う緊張感が襲ってきて、落ち着かない。そんな私の手を亘々は握りしめた。

「お嬢様、頑張って。お嬢様ならできる!」

「なにを?」

 まるで戦いに挑む前の応援のような言葉がけに、私は笑って肩の力が抜けた。

(やっぱり、亘々がいてくれると心強い。大丈夫よ、相手は雲朔ですもの)

 頬に赤みが戻ってきた。その顔色を見て、亘々は安心して部屋を下がった。

 亘々がいなくなって、入れ替わるように雲朔がやってきた。

「やあ華蓮、今日は顔色も良くなって一段と綺麗だね」

 歯の浮くような台詞を、一切の恥ずかしげもなく言い放てるのだからさすがだ。

 雲朔は、漆黒の室内着で肩に濃灰(のうかい)の袍(ほう)を掛けている。

 結い上げた髪をおろしている姿は、怖ろしさを感じるほど美しい。

 私の前では笑顔なので、萎縮してしまうほどの怖さはない。それに雲朔は、私にはこの上なく優しいし激甘だ。