天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

 次の日、ようやく亘々が後宮入りした。

「亘々!」

「お嬢様!」

 私たちは駆け寄って、しっかりと抱き合った。

「亘々、良かった。無事だったのね」

「お嬢様こそご無事でなによりです。それに麗しいその姿! 高価なお召し物がよくお似合いで。妃になるためにお生まれになったのでしょうね」

「婆くさいこと言わないでよ」

 私たちは再会をいつもの雰囲気で喜びあった後、私の殿舎に亘々を案内した。

「うっっわ、なんですかこの豪華さは!」

 亘々は、絢爛豪華、朱色が目に鮮やかで美しい宮殿内の廊下を歩いた。

 一介の女官である亘々を客間に通し、上等な椅子に座って共にお茶を飲む。

「なんですか、この待遇は……」

 亘々は甘い香りのするお茶をすすりながら言った。

「まあ、悪くないっすね」

 と満更でもなさそうな笑みを浮かべる。

「まさか雲朔様が新皇帝になられたとは。玉の輿どころの話じゃなかったですね」

 雲朔の話が出たので、私の顔が一瞬固まった。