天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

「もう行くね。ゆっくり休んで」

 そう言って雲朔は帰っていった。雲朔がいなくなってほっとしたのはいうまでもない。

(どうしたらいいの、私……)

 変わってしまったのは雲朔ではなく、自分なのか……。

 以前のようなときめきを雲朔に感じなくなってしまったことに気がついた。

(どうしよう、もうすぐ結婚するのに……)

 雲朔との結婚を誰よりも望んでいたのはずなのに。夢が叶って嬉しいはずなのに。

 雲朔の後ろに、志半ばで不遇の死を遂げた者たちの怨念を感じる。

 雲朔はたくさんの人を殺した。私のために。

(幸せになっていいのだろうか)

 雲朔が帰ったあとも、心のもやもやは残り続けた。