天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

「可愛いな、華蓮は。俺になにかされるとでも思った?」

 雲朔は近付いて、私の顔を覗き込んだ。

「そ、れは……」

「大丈夫だよ、華蓮の嫌がることはなにもしない。俺は華蓮を幸せにするためにここにいるんだ」

 雲朔は優しい。それは変わらない。それなのに、どうして怖いと思ってしまうんだろう。

 雲朔は、私の額に軽く口付けした。

 あの日のことを思い出す。全てが変わってしまった、あの悪夢のような一日を。

 あの時、雲朔がしてくれた額の口付けは、私の胸をドキドキさせた。涙も一発で止まるほど、嬉しい出来事だった。

 それなのに、今の私の心はまったく動かない。ドキドキもしないし、嬉しいという感情も湧き上がらない。

 幸か不幸か、雲朔はそんな私に気がつかなかった。

 優しい笑顔を向けて、昔のように私の頭をなでた。