天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

「雲朔が? どうして?」

 聞かれた女官は困ったような顔をして返事をしなかった。

 私だって、すでに十六歳。子供の時ならいざ知らず、夜の訪れがなにを意味しているのかは想像がつく。

 けれど、まだ正式に婚姻したわけではない。まさか雲朔が夜に訪れに来るとは思わなかった。

(どうしよう、まだ心の準備が……)

 拒むわけにはいかない。

 なにせ、私は雲朔のお嫁さんになるのだ。

 それを八年前懇願したのは私だ。そして雲朔は約束を守った。

(でも……)

 雲朔は八年前の優しい男の子ではない。

 何万人も惨殺し、皇帝とのぼりつめた男である。

(どうしよう亘々、怖い。どうしたらいいの?)

 一番側にいてほしい人物がいない。助言をもらうこともできない。

言われるがままに、豪奢な衣に着替えて雲朔を待つ。

 心の準備をする暇もなく、雲朔は訪れた。

 雲朔が室に入ると、女官たちは出て行った。二人きりとなってしまって、不安と緊張で胸がいっぱいだ。