天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

貧しい農村の一角に、ひときわみすぼらしい平屋がある。それが、私の家だ。

藁を詰め込んだだけの屋根は、雨が降ると漏れてくる。もう八年もボロ小屋に住んでいるから雨漏りにも慣れたものだった。

「ただいま~」

 戸口を開けて中に入ると、狭い部屋の奥に、私と同じく短褐を着た女性が織り機で反物を生産していた。

 彼女の名前は亘々(こうこう)。二十六歳で、女性として花盛りの時期であるというのに、男のように髪を緇撮(しさつ)に結い上げている。

 最新の織り機は、座ったまま踏み板を踏んで動かしたり、横棒や取っ手を使って繊細な模様を織ることができるけれど、彼女が使っているのは旧製のやたら大きな音が出る粗末なものだ。

最新式のように図柄が複雑な絹布を生産することはできないので、家計は常に苦しかった。