天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

  微笑んではいるけれど、鋭い目付きが、そのために何人も殺してきたのを物語っていた。

 自分のためにどれほどの人間が殺されたのか。

 想像するだけでぞっとしてしまって、素直に喜べない。

「妃は華蓮だけだから、後宮内全てが華蓮のものだよ」

「妃は私だけ? どうして?」

 私の問いに、雲朔の顔が曇った。

「妾をつくることは許さないと言ったのは華蓮だろう?」

「それは……」

 言いかけて、私は口を噤んだ。

 あの時は、雲朔が皇帝になるなんて思いもしなかった。とはいえ、今の雲朔に物申す勇気もなく、ただ黙って受け入れた。
(どうしよう、雲朔が怖い……)

 ようやく再会できたのに。生きていてくれただけで嬉しいのに。

 雲朔のことを怖いと感じる日が来るなんて思いもしなかった。

 雲朔は変わらず私のことを大事にしてくれている。むしろ、やりすぎだと思うくらいに。

それなのに、どうして素直に喜ぶことができないのだろう。

 雲朔の隣にいることが、ひどく居心地が悪い。