「ちょ、ちょっと雲朔、おろして! 私、歩けるから!」

 雲朔は私をお姫様抱っこして運んでいた。先に村を後にしていた禁軍の武官たちの元へ向かうためだ。

 二人きりならいざしらず、多くの人々の前でお姫様抱っこされている姿を晒すのは恥ずかしく、先ほどから私は抗議の声を上げているのに、雲朔は一向におろそうとしない。

 禁軍の武官の一人かと思っていたが、なんと新皇帝は雲朔だった。

 皇帝自ら、錦衣衛や禁軍の一部を引き連れて、たった一人の女性を探していた。こんな辺境な田舎にまで赴き、最愛の女性を見つけ出すために長い月日をかけて歩き回っていたのだという。

 そんなことに巻き込まれた武官たちは、ようやく探し人が見つかり都に帰れることになって喜びで溢れたらしい。