天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

  最初はなにが起きているのか把握できなかった。美しい光が輝いていて、とても綺麗だったからだ。

(これは、まさか……)

 頭に浮かんだ事柄の意味を考えると、一気に血の気が引いていった。私は後先考えずに走り出した。

(嘘……嘘……亘々!)

 転げ落ちるように山をおりていった。悲鳴を上げたいほどの恐怖に包まれながら、村へと向かう。

(村が、燃やされている!)

 それが、どういう意味であるのか。死地を乗り越えてきた私にはわかった。

(なぜ燃やす必要が⁉)

唯一の疑問はそれだ。村人たちが錦衣衛になにをしたのか。皆殺しにする必要なんてないはずだ。ここは辺境の田舎で、新皇帝の脅威になりうるものなんて一つもない。

 その時、亘々の言葉を思い出した。

『今、村内で原因不明の病が流行っているでしょう。その病にお嬢様もかかってしまったので隔離していると言ったら見に来ないでしょう。流行り病は一番怖ろしいですからね』