投げてきた人物を見るために後ろを振り向くと、薄汚れた襦褲(じゅこ)を着た男たちと、冴えない赭(あか)色の嬬衣(じゅい)を着て、裙子(くんし)の上から裳(も)を重ねた女たち数人が群れて笑っていた。歳は十六歳前後で、私と同年代だ。

 こんな子供じみた嫌がらせで楽しんでいるなんて、なんて愚かなのだろう。

 侮蔑の眼差しを彼らに向けて、無視してそのまま前を見た。頭にこびりついた泥砂を手で払いながら歩き出す。

 春になったとはいえ、長時間水で洗うのは凍えるほど寒いのに、まったく面倒なことをしてくれた。

まるで私に投げつけるように、癪に障る甲高い笑い声が後ろから聞こえる。

 それすらも無視をして、砂利を踏みしめながら家へ帰る。相手にするだけ無駄であるということを私は経験から嫌というほど学んでいる。

 一重底しかない粗悪な履(くつ)は、足裏に小石が当たって痛い。底が木で出来ていて泥除けもある舃(せき)を履いていた頃が懐かしい。鮮やかな銀朱(ぎんしゅ)色で絵柄や紋様も入っていた。