(生き延びなくちゃいけないのに。華蓮を迎えにいくって約束したのに……)

 打つ手がない。ほとんど勝機はないが、一か八かやってみるしかない。覚悟を決めて歩き出そうとするが、足が震えて動かなかった。

(動いたら、殺される)

 僕の冷静沈着な脳は、一か八かの判断を拒否していた。それでも、動かなくてはいけない。ここにいたとしても遅かれ早かれ殺される。

 足を踏み出そうとした時、地面に金色の蜥蜴がいることに気がついた。

(お前、あの時の……)

 小川に落ちて溺れ死にしかけているところを僕が助けた蜥蜴だ。まあ、僕も死にかけたけれど。

 蜥蜴は僕をじっと見つめ、そしてこっちに来いと言いたげに歩き出した。

(道案内してくれるのか?)

 この不思議な蜥蜴に賭けてみようと思った。足の震えは止まっていた。