天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

雲朔は私から目を逸らし、亘々の顔を見た。

「亘々、もしも皇帝派が負けたら、なるべく遠くへ行くんだ。誰も宮廷にいた人物を知らないような田舎がいい。そこで身分を隠し生活していくんだ。僕が華蓮を迎えにいくまで。いいね、華蓮を任せたよ」

「御意」

 雲朔は私の手を取って、引き離そうとしたけれど、私は意地でも離そうとしなかった。絶対に嫌だ、こんなの、嫌だ。

「嫌よ、怖い……」

 ついに私は大粒の涙を零してしまった。必死で我慢してきたものが溢れだし止まらない。

(ここで手を離したら、二度と会えないかもしれない……)

 それは予感のようなものだった。

 雲朔が死んでしまう気がした。

「大丈夫、約束する。僕は絶対に死なない。華蓮をお嫁さんにすることを諦めたりはしない」

 そう言って、雲朔は私の額に口付けを落とした。

 驚いて涙が止まる。雲朔は優しい笑顔を向けて、私の手をそっと離した。

 そして、無言で暗渠の暗闇に再び入っていく。

「約束よ、約束だからね雲朔!」

 雲朔の背中に向かって体から絞り出すように声を上げた。雲朔の姿が闇に消えていく。

「さあ、お嬢様いきましょう。我々もまだ完全に助かったわけじゃないんですよ」

亘々は私の手を取り、足早に歩き出した。