天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

「外廷は戦場と化している。そこに行くのは危険すぎる。後宮内から外に出るんだ」

「後宮から外に出る道はありませんよ。門は閉ざされています」

「地下から出るんだ」

「地下? そんな道が?」

「道じゃないよ。暗渠(あんきょ)だ」

 亘々はなるほど、という顔で雲朔を見た。

「あんきょ?」

 聞き慣れない言葉に、私が口を挟む。

「排水口のことだよ。工事や修復する時のために人が通れるようになっているんだ。ただ、汚いし臭いけど、生き延びるためだから我慢して」

 そして草木に隠されるようにひっそりと、濠(ほり)の石垣に暗渠の排水口はあった。重い排水口の蓋を、亘々と雲朔の二人がかりで持ち上げる。

 中は真っ暗で歩けるような道など見えない。

 雲朔は懐から小さな手燭(てしょく)を取り出し灯りをつけた。暗渠の中を手燭で照らすと、簡易な梯子がついていた。