天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

 血しぶきが飛び、首が刎ねられる。先ほどまで元気だった人達が無残に殺されていく。

 こんな残酷なことがあっていいのだろうか。

 目の前の出来事が現実とは思えず、涙も出ない。

 私は黙って亘々に引っ張られるまま紫禁城から抜け出した。

 後宮へと戻り、自らの殿舎へと帰りつく。

「とにかく、着替えましょう。逃げやすいかっこうを」

「逃げるってどこに? ここは安全ではないの?」

私は不安げに問いかけた。

「わかりません。私にも、これからどうなるか……」

 細筒の褲(こ)を穿き、分厚い深衣には、路銀や簪などを入るだけ詰め込んだ。

「でも、どこから逃げ出すというの? 後宮が一番安全ではないの?」

 泣きそうになりながら亘々に訴える。亘々は私の目を見てはくれない。

「わかりません、どこが安全なのか。皇帝派が逆賊として殺されている中、外に出られたとしても捕まって殺される可能性があります。後宮妃たちのほとんどは皇帝と親しい家柄がほとんどですから、後宮妃たちを見逃してくれるとは思えない……」