天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

  今日の亘々は機嫌がいいわね、と私は思った。

 しかしながら、亘々の機嫌が良かったのはこの時までで、それからは怒涛のように支度に急かされた。

 豪奢な上襦下裙(じょうじゅかくん)を身にまとい、光に当たると宝石のような粒が煌めく披帛(ひはく)を肩にかけ、髪は双鬟(そうかん)を結び、七宝胡蝶(しっぽうこちょう)の簪(かんざし)を挿した。

「遅れる~!」

 と叫ぶ亘々の後を追いかけて、私は初めて紫禁城に足を踏み入れた。

 噂には聞いていたが、想像以上に広大だった。特に紫禁城で最大の正殿である太和殿(たいわでん)は、驚くほど絢爛華麗だった。
太和殿前の広場には、無数の官吏がずらりと並んでおり、それだけでも圧巻の光景だ。

後宮妃やそのお供をする女官たちは太和殿の隣の殿舎の中にいた。

私たちから官吏や武官の姿は見えるけれど、彼らからは後宮妃の姿を見ることはできない。