天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

 宰相と局丞は二人連れだって歩いていった。隠れる様子もなく堂々と後宮内を歩いているので、なにか用事があったのだなと気にしないことにした。

 僕が再び歩き出すと、手の平ほどの長さの黄金(こがね)色の蜥蜴(とかげ)が足元を横ぎった。灰褐色や緑色の蜥蜴は見たことがあるが、ここまで鮮やかな黄金色の蜥蜴を見るのは初めてだ。

 なにを隠そう無類の虫好きである僕は、興奮して蜥蜴を追いかけた。 

 すると、蜥蜴は太鼓橋の欄干に登った。僕も追いつき、太鼓橋を渡ると、欄干にいた蜥蜴はなぜかボトっと欄干から落ちて小川に落下した。

「おいっ! どんくさい蜥蜴だな。大丈夫か⁉」

 蜥蜴は人間の言葉をわからないと思うが、僕は太鼓橋の上から声を上げた。

(たしか蜥蜴って泳げるよな。でも、泳げない種類もいたような……)

 不安になりながら小川を見下ろしているが、一向に川の中から上がってくる気配はない。

(おいおい、大丈夫かよ)