天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

 疲れた時は華蓮の顔でも見れば疲れも吹き飛ぶのになと思った僕は、どこかでやんちゃしていないかなと周りを見渡しながら歩いていると、なにやらこそこそと密談しているような雰囲気の二人がいた。

(あれは、宰相の盾公(とんこう)と掖廷(えきてい)局の局丞(きょくじょう)、趙文(ちょうぶん)じゃないか。局丞はまだしもなぜ宰相が後宮に……)

 通例では後宮は男子禁制であるが、鴛家の時代はそのしきたりは緩かった。華蓮の父も後宮に入れるように、宦官の付き添いがあれば宰相でも後宮に入れる。

 宦官の長である局丞と一緒であれば問題はなにもないのだが、宰相が後宮に来る理由が思いつかない。宰相の親戚に後宮妃はいなかったはずである。

 なんだか不穏な空気を感じてじっと見ていると、宰相が僕の存在に気がついた。

 慌てる様子もなく慇懃(いんぎん)に揖礼(ゆうれい)する。あまりに堂々としているので、怪しいと感じていたのは思い過ごしかと思った。