天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

◆雲朔目線

(はあ、疲れた……)

 それから数日後。僕はすっかり疲れ果て重い足取りで歩いていた。

 なぜなら、苦手な武道の鍛錬をしてきたからである。兄たちは皇帝である父に似て、一様に武芸に秀でている。それに比べて僕は、運動全般がからきし苦手だった。

 生まれつき体が弱かったことも影響しているが、そもそも武芸全般が好きではないのだ。誰かを殺すために練習しているのかと思うと気が滅入る。

 鴛家が皇位を継承してから三世代、戦争がなかったので平和慣れしているのかもしれない。できれば誰も傷つけたくないし、自分も傷つきたくない。頑張る意味を見いだせない。

 武芸の師範いわく、皇子の中で一番素質があるのは僕らしいが、誰も信じていないし、期待されてもいない。

 皇位を継承するのは第一皇子だと思われているし、第五皇子である僕は武芸よりも頭の良さが評価されていた。

兄弟の中でも抜群に頭がいいので、『雲朔は武芸よりも勉強しろ』と言われて、僕もそちらの方がありがたかった。