天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

姉が殺されたといっても、弦武には金持ちの両親がいたし、別の人生もあったはずだ。荒くれ共が集う禁軍の武官ではなく、宮廷で汚れ一つない衣を着た文官の道に進むことだってできたはずだ。

 禁軍にいるということは、いつ死んでもおかしくはない。俺は好き好んでここにいるが、弦武はどうなのだろう。なぜか急に、そんなことが気になった。

「お前さ、ずっと禁軍にいるつもり?」

「そうですが、なにか問題でも?」

 弦武はリスのようにちまちま握り飯を食べながら言った。

「雲朔に頼んで文官にしてもらったら?」

 それまで一度も俺の顔を見ずに握り飯を食っていた弦武が、俺の顔を見た。

「どうしてそんなことを? 自分で言うのもなんですが、俺がいなくなったら全員困ると思いますよ」

 確かに、俺も困る。言っておきながら、弦武がいなくなった後のことを考えていなかった。

「そうだけど、お前の人生だろ」