天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

弦武が持ってきた握り飯をもらい、かぶりつく。弦武は行儀よく、背筋を伸ばしながら黙々と食べていた。

 弦武は貴族出身だから育ちがいい。頭もいいし、顔立ちも女みたいに整っている。

 雲朔と似た性質だが、決定的に違うのは簒奪帝を倒したかった動機だ。弦武は姉を殺された復讐心からだった。

 出会った頃の弦武は、まだ少年で体は貧弱だった。俺と雲朔は、弦武が戦いに参加することをずっと反対していた。

でも、弦武は何度も土下座して頼みに来た。

貴族が山賊に土下座するなんてあり得ない。

それほど切迫した強い望みだった。

 弦武は幼いながらも絶望を知った目をしていて、なにをしでかすかわからない危うさもはらんでいた。

 それでも戦に子どもを参加させることはできないと一蹴していたが、弦武の弓の技術は天才的だった。

誰よりも正確な弓矢の軌道。

遠くから参戦するということで、弦武は少年ながら戦いに参加することになった。

 実際、あの戦いで弦武は多大な貢献をしている。

弦武は天才だ。

だが、天才ではなかったら、戦いには参加せずに済んだ。

幼い少年に、あの悲惨な戦地を見せてしまったことは本人にとっていいことだったのか。俺にはわからない。