天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

(力で抑えつけるなんて簡単なことだ。ここで俺が彼らを全員殺しても問題にすらならないだろう。だからこそ、俺は……)

 下を向いて、息を吐く。時々、なにが正しいのかわからなくなる。

初めて人を殺したとき、思わず吐きそうになった。

死人の見た目の気持ち悪さよりも、強烈な罪悪感が襲ってきたからだ。

殺した人間の血しぶきが全身にかかり、体臭と鉄が混じったような匂いにえずいた。

今は、血が自分にかからないように綺麗に斬ることができる。そんな器用さなんて、本来得ない方がいい。それだけ人を殺めてきたということなのだから。

 俺は何者なのだろう。皇帝は殺人を犯しても罰せられない。言葉一つで死刑を言い渡すことができる。多くの人の命を握っている。俺は、それに値する人物なのだろうか。

 苛ついて、悪態をつく村人を睨みつけるような未熟者なのに。こんな大人に、なりたくなどなかった。

「大丈夫か、雲朔」

 雄珀が俺の肩に手を置いた。顔を上げたら二人が側にいた。