天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

 傷口を見ると、赤くただれたところがどんどん広まっていく。数秒で傷は腹まで達し、どんどん体は腐っていく。

 尸鬼は人間を襲い、仲間にしていく。そんな言い伝えを思い出し、血の気が引いていく。

「雲朔、斬れ! 尸鬼になるぞ!」

 雄珀が叫んでいるのが聞こえた。

(斬る? 村人を? 敵でもない、武官でもない、ただの一般庶民だ)

 庶民は戦いに巻き込んではいけない。それは古くから伝承される鴛家の教えだ。

 村人は叫び声を上げながら、傷が広がり頬肉まで焼けただれた。

(違う、この者はもう、人間ではない)

 村人の手が助けを求めるように俺の胸に向かって手を伸ばした。

 一瞬で首を斬った。切っ先すら見えないほどの速さだ。半分尸鬼になりかけた顔が、地面に転がる。すると、体も倒れた。溶けるように朽ちていく。

「うわ~、人殺しだ!」

 少し遠くから見守っていた村人たちが俺を指さす。

 俺は剣を鞘に収めないまま、ギロリと村人たちを横目で睨みつけた。

 すると、村人たちは息を飲んで、それからはなにも発しなくなった。