天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

 弦武の言う通り、尸鬼は海からさほど離れていなかった。生ごみの腐ったような匂いがしてその周辺を見渡すと、林の中で尸鬼がさまよっていた。

 茂みに隠れ様子を窺う。

 戦略を考えている時だった。林の奥の方から村人が大きな声で叫んだ。

「尸鬼だ!尸鬼が来たぞ!」

 指をさして、興奮するように騒ぎ立てる村人たち。船乗りや武官たちはこの場から逃がすことができたが、村人たちは盲点だった。
「くそ、あいつら、俺たちに石を投げてきた奴らじゃねぇか」

「大きな声を出したら尸鬼に狙われる」

 俺が立ち上がると、村人たちは、今度は俺を指さして罵った。

「皇帝のせいだ! 尸鬼が現われたのも、尸鬼が村にまで侵入してきたのも、全部あいつのせいだ! 愚帝め、帝位を降りろ!」

「あんのやろうっ」

 雄珀が怒って立ち上がった。

「やめろ、彼らは悪くない」

 俺が雄珀を止めると、弦武も悔しそうな顔で俺を見上げた。