天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

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 本土に到着すると、俺は真っ先に船を降り駆け出した。弦武は雄珀を気遣いながらも、俺の後を追ってこようとしている。

「いいから、その場で待っていろ」

 走りながら二人に言うと、二人は歩みを止めるどころか加速して俺の隣に追いついた。

「おい、なめんじゃねぇぞ、このくらいの傷、屁でもねぇわ」

「その発言、不敬罪で処罰されますよ」

 淡々とした表情で雄珀に突っ込みを入れる弦武。

 一緒に戦うことを当然と思っている。この二人にはなにを言っても無駄だなと思った。

 呆れるような、心強いような……。

(ありがたい)

 死地をかいくぐった仲間だ。俺が彼らを守ろうとすれば怒るだろう。雄珀なら、『お前が俺に守られてろ』と言うかもしれない。
 俺は薄っすら笑みを浮かべ、尸鬼を倒すために頭を切り替える。

「尸鬼の後を追うのは簡単だな。ご丁寧に足跡を残してくれていやがる」

 尸鬼の踏んだところは、燃えたあとのように黒く汚れている。

「泳ぎ疲れているでしょうから、そう遠くには行っていないはずです」