天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

 不思議なもので、歴代の皇帝が祀られている祠堂に赴くと、それまで雲朔は愚帝なのではと懐疑的だった者たちまでが、雲朔の生還を心から祈る気持ちになるという。

 官吏たちが話しているのを立ち聞きした亘々から聞いた。

 雲朔は由緒正しき血統の皇帝だ。簒奪帝とは生まれからして違う。

 歴代の賢帝たちのおかげで国は栄え平和に過ごせてきた。亡くなった皇帝に世話になった者は、昔を思い出しながら涙を流している者もいたそうだ。

 薄まりかけていた信仰心を思い出し、天に祈る。血も涙もない残酷な現実に打ちのめされ、天は大栄漢国を見捨てたと思っていたが、そうではない、天は新たな皇帝を我らに授けたのだ。今こそ天の御力を信じる時だ、とみんなの心がだんだんと一つになっているのを感じる。

 私の切実なる祈りの姿が、なくなりかけていた皇帝への求心力をあげ始めていた。

 けれど私は、そのことを意図して祈祷を始めたわけではなかった。最初は、祈祷に一生懸命になるあまり、こんなにも人が増えていることにすら気がつかなかった。

(天上にいらっしゃる皇祖の神々の御方よ、どうか雲朔をお守りください)

 今、自分にできることはこれしかない。

天の御力を強め、雲朔に届けること。この行為が無駄だとは一片の疑いもなかった。なぜなら不思議な力が宿った鏡を実際に見ているからだ。

(雲朔、どうか、どうか無事で……)

 ひたすら真摯に祈り続けた。