天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

 いつかは必ずこうなっていたのだ。自分たちがいる時にそれが行われたことを不幸中の幸いと思おう。

(だが、どうやって尸鬼と戦う? 真っ二つに斬った尸鬼はちゃんと死んだのか? そもそも、すでに死んでいる者をどうやって殺す?)

 結局全面戦争になりそうだ。尸鬼が本土に辿り着く前に戻らなくては。

 船が本土に近づくと、待機していた武官たちや船乗りたちが、笑顔で手を振っていた。彼らはまだなにも知らない。

「逃げろ! いますぐそこから逃げろ!」

 俺は大きな声で彼らに呼びかけたが、潮風の流れが悪いのか彼らには届かない。焦燥感だけが増していく。

 すると、負傷した腕を片方の手で支え、そこから熱が出ているのか額に大粒の汗を拭き出している雄珀が、船の先頭に立ち大声を放った。

「逃げろ~!」

山にまで届くかと思うような大声だった。

 潮風すらものともしない声に、本土にいる味方の動きが止まった。手を下げ、笑顔が消えた。皆で顔を合わせて、様子を窺っている。