天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

「すみません、僕を庇ったから」

 弦武は自分の服の腕布を切り裂いて、雄珀のただれた手に巻いた。

「こんなもん、かすり傷だよ」

 雄珀は笑顔で言ったが、額には大粒の汗が吹きだしている。

 とりあえず無事なことに安堵したが、俺はあることを思い出した。

「戻れ! 早く本土に戻るんだ!」

 俺が叫んだので、雄珀と弦武は驚いて緊張感を高めた。船乗りは櫂(かい)を大きく漕ぐ。

「海に潜ったのは、一人じゃない」

 俺の呟きに、雄珀と弦武の顔が曇る。

「くっそ、泳げないんじゃないのかよ!」

苦々しそうに雄珀は叫んだ。

「泳げないのではなく、泳いだことがなかったのだろう。現に、他の尸鬼たちは島に残っている」

「俺たちが怒らせたからか?」

 雄珀が悔しそうに眉を寄せると、弦武が首を横に振って言った。

「いいえ、遅かれ早かれ尸鬼は海を渡ったでしょう。島は食いつくされたように木々が枯れ果てていました。食べ物がなくなれば、海を泳がざるを得ない」

 弦武の冷静な分析は、俺の見立てとも合致している。