天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

 これなら被害が島一つで済むかもしれない。時間はかかりそうだが、被害を最小限に抑えることができるだろう。

 小舟はゆったりと揺れながら進んでいく。これから得体の知れない化け物と戦いに行くとは思えないほどの呑気さが俺たちを包んでいた。

 雄珀なんて昨晩遅くまで船乗りたちと酒を酌み交わしていたから、大きな欠伸と共に酒の匂いまで海の風に吹かれて運ばれている。昨日の昼は言い争いになっていたのに、夜には肩を組んで一緒に歌うほどの仲良しぶりだった。

 島に十分な距離を取って、尸鬼が現れるのを待つ。肉眼で確認できる距離まで出てきたら、弦武の天才的な弓矢を放つ。伝説上の生き物だと思っていた尸鬼を見ることができると思うと、恐怖よりも高揚感の方が上回っていた。

 それもこれも、安全な場所にいると思っていたからである。

数刻ほどが経過し、太陽が真南に上がっていく時分に、ようやく尸鬼が姿を現した。